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白い部屋 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 待ち人の訪れに、嬉しさを隠しきれず顔を上げれば、 病室の白い扉を開けて立っているのは、赤い服の子供がただ一人。 トムの視線はイブカを通り過ぎて、その周囲をさ迷う。 「アルなら、そこまで一緒に来たんだけどな〜。 ヒゲのおっさんに呼び出されて、ヤードにブッ飛んでった」 「…そうなのか」 「あんたに 『ごめん』 って、伝言だぜ〜」 トムは落胆と共にため息を吐き切ると、 室内にいた看護婦に向けて、くるりと表情を変えた。 子犬のように人懐こい笑みを浮かべて、緑の瞳で彼女を捕らえる。 「二人だけで話がしたいんですけど。 しばらくの間、席を外してもらえませんか?」 「でも今日は、警察の方が御一緒ではありませんし…」 「あなたにだから、お願いできるんです。 僕の言ってる意味、もちろん分かってもらえますよね」 恐らく患者の監視も兼ねているのであろう看護婦は、 当惑した様子で、バラ色に染めた頬を押さえた。 「…じゃあ特別に、少しの間だけですから」 予想外にあっさりと、看護婦は部屋を出ていってしまう。 イブカは口笛を鳴らすと、含みのある視線をトムへと向けた。 「お前、ビョーインの看護婦、みんな落としてんのか〜?」 「必要に駆られる程度に、だよ」 「便利なワザだな〜」 「試してみるかい?」 半分は悪戯心、もう半分は意地悪のつもりで洩らした言葉に、 負けず嫌いの子供は、瞳を反らすことなくトムを睨みつける。 「オレ、まだ14歳だぜ〜?」 「知ってるよ、手を出したら犯罪だろ」 あはは、と声を立ててトムが笑う。 「けっ!」 からかわれたのだと気付いたイブカが、 僅かに上気した顔を反らして、悔しそうに吐き捨てる。 「そんだけリハビリできてんなら、ジューブンだろ」 「最後にもう一度、先輩に会って行きたかったけれど」 「会おうと思えば、いつだって会えるぜ〜」 「それはきっと、願うほど簡単じゃないさ」 「でも、お前は生きてる」 目を見開いたトムに、イブカがニヤリと笑う。 「アルなら、そう言うかもなー?」 「…そうだな」 イブカはトムの側を横切ると、窓辺で足を止めた。 白い部屋の、白い窓。 振り向いた表情は、外からの光を受けて分からない。 「小鳥をカゴに閉じ込めたら、ダメだ〜」 歌うように呟いて、イブカが窓を大きく開き放つ。 部屋の中へと、白く差し込む光。 お前は自由だと、告げる声にトーマス・M・シンプソンは静かに頷いた。 |
氷樹様に「残暑見舞」としていただきました♪ |